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大規模木造の乾燥収縮による割れ・隙間とは

木現し(柱や梁などの木材を仕上げ材で覆わずに見せる設計)は、木材の質感を活かした空間づくりに適しています。一方、木材は乾燥に伴って寸法が変化するため、竣工後に割れや反りが生じたり、接合部に隙間ができたりすることがあります。

大規模木造で木現しを採用する際は、こうした乾燥収縮の仕組みを理解し、材料選定や接合部の納まりに反映させることが重要です。本記事では、乾燥収縮による割れ・隙間が発生するメカニズムや構造性能への影響、設計段階で取り組める対策を解説します。

木材の乾燥収縮と割れが生じる仕組み

含水率の変化と収縮の関係

木材内部の水分には、細胞の空隙に存在する自由水と、細胞壁に含まれる結合水があります。木材は乾燥によって自由水が失われても、すぐに大きく収縮するわけではありません。含水率が繊維飽和点を下回り、細胞壁から結合水が失われ始めると、寸法収縮が生じます。

建築に使われる木材も、製造時や施工時の含水率と、建物の使用環境における平衡含水率との間に差があれば、竣工後も収縮や膨張が起こります。乾燥収縮の影響を抑えるには、使用環境を踏まえた材料選定と含水率管理が必要です。

繊維方向による収縮の違い

木材は、繊維方向によって収縮率が異なります。一般に、年輪に沿う接線方向の収縮率は、年輪の中心から外側に向かう半径方向の約2倍とされます。一方、繊維方向の収縮は小さく、横方向に比べて寸法変化はわずかなものに留まります。

この性質は「収縮異方性」と呼ばれ、木材内部の方向による収縮差や、年輪の向き、木取りなどが、乾燥に伴う反りやねじれ、割れに関係します。部材の断面や木取りによって変形の出方が異なるため、意匠上の見え方も踏まえて材料を選定することが大切です。

参照元:フローリング総合研究所公式HP(https://www.woodtec.co.jp/lab/wood/knowledge/wood6/)

乾燥時の内部応力が割れを生む

木材の表層が内部より先に乾燥すると、表層は収縮しようとする一方で、含水率の高い内部は寸法変化が小さいため、部位ごとの変形に差が生じます。このとき発生する応力が木材の強度を超えると、表面割れなどにつながります。

また、乾燥が進む過程では、部材内部の含水率分布や応力状態も変化します。割れの発生や進展には、樹種、断面寸法、木取り、乾燥条件などが関係するため、単に乾燥させれば割れを防げるわけではありません。

木現し部材に生じる割れ・隙間と意匠への影響

現し部材で生じやすい症状

大規模木造の現し部材では、乾燥収縮に伴って次のような症状が見られます。

これらの症状は、部材の種類や断面、含水率、設置環境などによって発生の程度が異なります。設計段階では、木材の特性だけでなく、どの部位の症状が意匠や機能に影響を及ぼすかを把握しておく必要があります。

意匠や建具・取り合い部への影響

見付幅の広い柱や梁に割れが生じると、木目や色合いとともに空間の印象を左右します。また、化粧継手や仕口のかみ合わせ部分に隙間が生じると、設計時に意図した納まりや美観が損なわれることがあります。

石こうボードの壁やサッシ枠など、木材以外の部材との取り合いにも注意が必要です。木材の収縮や変形によって接触状態が変わり、隙間や段差が目立つことがあります。建具の開閉や仕上げ材の取り合いに支障が出ないよう、部材の動きを見込んだ納まりを検討することが求められます。

乾燥収縮による割れは不具合なのか

乾燥収縮による割れは木材の自然な性質に伴うものであり、それ自体が直ちに「不具合」や「施工不良」となるわけではありません。しかし、発生した割れのすべてを無条件に許容できるわけでもありません。

割れの位置・幅・深さ、あるいは接合部との位置関係によっては、意匠上の美観や構造上の安全性を損なうおそれがあるためです。そのため、意匠面においては設計段階で施主と外観上の許容範囲をすり合わせ、構造に関わる割れについては構造設計者とともに影響を適切に評価することが重要となります。

乾燥収縮による割れが構造性能に与える影響

接合部の割れと構造性能の確認ポイント

ボルトやドリフトピンなどの接合具の周囲に生じた割れは、接合部の構造性能に影響する可能性があります。特に、割れが接合具に沿って進展したり、木材の割裂につながったりする場合には注意が必要です。

割れの影響は、幅や深さだけで一律に判断できません。割れの方向・長さ・深さ、接合具との位置関係、部材に作用する力、接合仕様などによって評価が異なります。割れの許容範囲を一律の数値で判断するのではなく、部材と接合部の設計条件を踏まえた検討が必要です。

設計者のみで構造上の安全性を判断せず、構造設計者と評価方針を共有することが大切です。竣工後に割れが見つかった場合も、外観だけで判断せず、割れの位置や進展状況、接合部との関係を確認したうえで、必要に応じて構造設計者による評価へ繋げることが求められます。

乾燥収縮による割れ・隙間を抑える設計対策

含水率と乾燥方法を適切に選ぶ

乾燥収縮の影響を抑えるには、部材の使用環境に応じた含水率管理が重要です。木材の含水率が、施工後に想定される平衡含水率から大きく離れていると、使用開始後の寸法変化が大きくなることがあります。

構造用製材では、JASの乾燥材に関する含水率区分としてSD15やSD20などがあります。採用する材料の種類や仕上げ、使用環境に応じて適切な条件を定め、設計図書に必要な含水率や品質の条件を明記します。構造用集成材やCLTなどは、それぞれの製品規格や仕様に基づいて検討します。

また、人工乾燥を行った木材であっても、割れや変形が完全になくなるわけではありません。樹種や断面寸法、要求品質などを踏まえて乾燥方法を選び、納入時の含水率や確認方法についても、必要に応じて製材者・供給者と協議しておくことが大切です。

製材と集成材の特性を踏まえて材料を選ぶ

無垢製材は、木材本来の質感を活かせる一方、乾燥に伴う割れや反りを見込んだ断面・木取りの検討が重要です。特に大断面の無垢材では、乾燥条件や内部と表層の含水率差なども、割れの出方に関係します。

一方、構造用集成材は、乾燥させたラミナを積層して製造するため、無垢の大断面材とは寸法変化の特性が異なります。ただし、集成材であっても使用環境に応じた含水率の変化や割れが生じることはあります。材料ごとの特性を把握し、意匠性、構造性能、調達条件を踏まえて選定することが基本となります。

断面・木取り・納まりを工夫する

木材の割れ方や変形は、断面寸法や木取りによっても異なります。設計段階では、木材の特性を踏まえ、割れが目立ちにくい部材の選定や納まりを検討することが重要です。

例えば、無垢材では、見えがかりの裏側に溝を設ける「背割り」を用いて、乾燥に伴う割れを背割り側に誘導する方法があります。また、髄を含まない心去り材を採用することも、木取りを検討する際の有効な選択肢です。ただし、これらの方法は部材の種類や断面、構造上の条件、意匠上の要求によって適否が異なるため、一律に採用を決定することはできません。

接合部や異種材料との取り合いでは、目地やクリアランスをあらかじめ設け、部材の寸法変化を納まりに反映させる方法もあります。エッジの面取りや目地の位置を意匠に組み込めば、隙間が生じた際の見え方にも配慮できます。

施主と割れ・隙間の許容範囲を共有する

木現しを採用する場合は、乾燥収縮に伴う割れや目開きが生じる可能性を、設計・契約の段階で施主に説明しておくことが重要です。木材の自然な表情として許容できる範囲と、補修や調査が必要となる状態を区別し、認識を共有しておくことが大切です。

特に、柱や梁の見え方を重視する建築では、割れの発生そのものだけでなく、どの部位にどの程度の変化が生じると意匠上の問題になるかを具体的に伝えると、完成後の認識のずれを抑えやすくなります。構造性能に関わる判断は外観上の許容範囲とは分けて考え、必要な評価や対応の方針もあらかじめ共有しておくことが求められます。

乾燥収縮による接合部の隙間を抑える方法

接合方式と乾燥収縮への対策

木材の乾燥収縮は、接合部の接触状態や締付け状態にも影響することがあります。接合具の配置や締付け条件、木材の含水率などによっては、隙間や緩みにつながるため、部材の寸法変化を見込んだ接合部の設計が必要です。

接合金物を木材表面に取り付ける方式と、金物を木材内部に納める方式では、意匠上の見え方や接合部の構成が異なります。内部に金物を納める方式は、金物の露出を抑えやすく、木材の見えがかりを重視する設計において有効な選択肢となります。ただし、乾燥収縮の影響や接合部の性能は工法ごとに異なるため、金物の位置だけで判断せず、接合方式の仕様や評価条件を踏まえて検討することが重要です。

拡張樹脂アンカー工法の特徴

木材内部で接合する方式の一つに「拡張樹脂アンカー工法」があります。木材内部にボルトを納め、拡張部に樹脂を充填して定着させる接合工法です。

木材表面に金物を取り付ける方式とは異なり、接合金物を木材内部で定着させるため、木材表面の収縮が金物の接触状態に及ぼす影響を受けにくい接合方式です。木現しの意匠を重視しながら接合部の構成を検討する際には、こうした工法も選択肢の一つとなります。

工法を検討する際は、要求される接合耐力や部材断面、現場での施工・養生条件などを踏まえ、建物ごとの構造計画に応じた適用条件を検証しておくことが重要です。

竣工後に確認したい割れ・隙間の変化

空調や季節変化による含水率の変動

木材は、周囲の温度や湿度に応じて含水率が変化します。竣工後も、空調設備の運転や季節ごとの湿度変化に伴い、現し部材は収縮と膨張を繰り返します。特に、暖房によって室内が乾燥する時期には、部材の含水率が低下して寸法変化が生じることがあります。

そのため、設計段階では竣工時の状態だけでなく、建物の使用環境に応じた経時的な変化も考慮する必要があります。建具や仕上げ材との取り合いでは、木材の動きを見込んだ納まりを検討し、完成後の環境管理についても施主と事前に認識を共有しておくことが推奨されます。

割れや目開きの状態を記録する

竣工後に割れや目開きが確認された場合は、発生箇所や幅、長さ、深さ、接合部との位置関係などを記録し、その後の変化を比較できるようにしておくことが推奨されます。写真や寸法の記録を残しておくと、割れの進展状況を把握する際に役立ちます。

特に、接合部付近で割れが進展している場合や、部材の変形、接合部の緩みなどが見られる場合は、外観だけで問題の有無を判断せず、構造設計者に相談することが重要です。経過観察の方法や補修の要否は、割れの状態と部材の役割に応じて個別に判断することが求められます。

まとめ

大規模木造では、木材の乾燥収縮によって割れや反り、接合部の目開きなどが生じることがあります。影響を抑えるには、使用環境に応じた含水率管理や材料選定、断面・木取り・納まりの工夫が重要です。

接合部付近の割れは、幅だけで構造性能への影響を判断できません。割れの位置や進展状況、接合仕様などを踏まえて構造設計者が評価する必要があります。木現しを採用する場合も、意匠上の許容範囲と構造上必要な対応を分けて考え、設計段階から対策を検討しましょう。

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