福祉施設、特に高齢者施設を木造で建てるメリットには、鉄筋コンクリート造や鉄骨造よりも建設コストが安くなり、補助金事業に対応しやすいという経済的なメリットのほかに、空間の可変性が高い建築が実現可能であり、大断面部材を用いた大スパンも実現できるメリットがあります。
そのほかに、耐火・準耐火も木造で対応可能であり、耐火建築物であれば、建築基準法改正により優遇されます。このページでは、木造建築の福祉施設の事例を取り上げます。
浅田設計室が携わった「ぷろぼの福祉ビル新築工事」では、CLTパネルを使用して、奈良市市街地中心に、障害者の就労移行支援や継続支援等を目的とした障害者福祉施設を、施工します。5階建ての建物で耐火建築であり、壁・柱はCLTの告示耐火仕様で計画されている建物です。CLTのJAS制定後の初の大型建築となると思われます。
浅田設計室が携わった「美原荘地域密着型サービス施設~すごうの郷~」は、延べ床面積約2900㎡、木造軸組み工法3階建て、1時間耐火の建物です。この規模では、構造部材は集成材での計画となります。主要構造部材は、カラマツの集成材であり、1時間耐火のため、耐火メンブレンで覆われます。外装材や内装材にも、多くの木を使用しました。
株式会社エヌ・シー・エヌが携わった「ベストライフ杉並」は、長期的な事業計画から導かれた木造高齢者施設です。この施設は、木造のSE構法を採用しています。梁は標準材を2本横に束ねた材として、石膏ボードを下端に張り、梁成を抑えながらフラットな天井面を実現しました。E構法の強固な金物で柱と梁を緊結して、梁のたわみを回避しています。
株式会社SAP建築事務所のプロジェクトである「ほっとエール」は、木造2×4工法を採用した高齢者施設を建てるプロジェクトです。このプロジェクトでは、プランニング、防耐火設計、構造設計、設備設計、施工指導をサポートしており、計画初期から、複雑な条令や各種法規などの高齢者施設特有の事項にも対応しています。
大規模木造建築に対応する構造設計事務所のうち、対応できる工法の種類が豊富な3社をご紹介します。
工法の種類が多いということは、それだけ叶えられる意匠の幅が広いということ。
各事務所の“強み”にも注目して、相談先を探しましょう。
※対応工法例は、公式HPに表記のある工法のみを記載しています。
※選出した3社は2022年2月7日調査時点で「木造建築構造設計」というキーワードでGoogle検索し表示された木造建築に対応する31社の中から、大規模建築に対応する22社を抽出し、その中で公式HPに記載された工法が多い3社を選定しています。