こちらの記事では、「準耐火建築物」について解説しています。準耐火建築物の定義や、耐火建築物との違い、木造を準耐火建築物にしなければならない条件などを紹介。また、近年行われた建築基準法改正では、木造建築にはどのような影響があったのかをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
建築基準法における「準耐火建築物」とは、建築基準法第2条第1項第九の三号に定められた建物のことです。具体的には、「耐火建造物以外の建築物のうち、建物の主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段など)が「準耐火性能」を満たす構造であるもの」かつ、延焼のおそれがある開口部(窓やドア)に対して防火戸など、火災を遮る設備を持つ建築物を指します。
すなわち準耐火構造とは、火災が発生した場合に建築物の倒壊や延焼を一定時間防ぐ構造を持つ建築物のことです。つまり、建物そのものが火災による倒壊を一定時間防ぐ機能を持ち、さらに外部からのもらい火を防ぐ設備を備えた建築物である、といえます。
準耐火建築物と耐火建築物の大きな違いは、火災に耐えられる時間と性能のレベルです。
耐火建築物では、火災が発生した際の倒壊防止と延焼防止の双方の目的を持っており、高い防火性能が求められる建築物といえます。建物の主要構造部分が耐火構造であること、または耐火構造以外でもその技術的基準に適合している点が求められます。
対して準耐火建築物は、耐火建築物ほどではないものの一定の防火性能を持った建物をいいます。一定時間(通常は45分〜1時間)、火熱による延焼の拡大を防ぐことに加え、火災による建物などの延焼を抑える性能が必要となります。
木材などの可燃材料を用いて建てられた建築物では、下記の規模に達した場合には火災のリスクが高まるため、準耐火構造など火災に対する設計が求められます。
不特定多数の人が利用する「特殊建築物」には、劇場や病院、学校、共同住宅、劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場などが該当します。このような建築物では、理想の安全と迅速な避難を確保することが求められることから、階数や床面積に応じて耐火建築物または準耐火建築物としての設計が必要となります。
例えば劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場の場合には、3階以上の建築物であれば耐火建築物とすることが求められますし、客席が200m2以上(屋外観覧席の場合は1,000m2以上)の場合には準耐火建築物として設計します。
このように「3階以上の階」や「200m2以上」「500m2以上」など、用途に応じた具体的な面積や階数について細かく指定されています。
建物を建てるエリアによっても、火災を防ぐための厳しい構造制限が定められています。
「耐火構造」と「防火構造」は、どちらも火災による被害を抑えるための構造ですが、対象となる建物の部分や求められる性能が異なります。
耐火構造とは、壁や柱、床などの建築物の部分について、通常の火災が終了するまでの間、火災による建物の倒壊や延焼を防ぐために必要な耐火性能を持たせた構造のことです。
建物内部で火災が発生した場合でも、一定の耐火性能を確保することで、主要な構造部分の損傷や火災の拡大を抑える役割があります。
防火構造とは、主に建物の外壁や軒裏を対象として、周囲で発生した火災による延焼を抑えるための構造です。近隣の建物などで火災が発生した際に、外部から建物へ火が燃え移ることを抑える役割があります。
このように、耐火構造は建物そのものの倒壊や延焼を防ぐための性能、防火構造は周囲で発生した火災から建物への延焼を抑えるための性能という違いがあります。建築物を計画する際には、建物の規模や用途、地域などに応じて、必要となる防耐火性能を確認したうえで構造や仕様を検討することが重要です。
準耐火建築物は、一定の防火性能を確保しながら木造建築を計画できる一方で、必要な性能を満たすための仕様や設計上の制限もあります。計画する際には、メリットとデメリットの両方を確認しておきましょう。
準耐火建築物では、主要構造部などに必要な準耐火性能を持たせることで、火災による延焼や建物の損傷を一定時間抑えることができます。火災時の避難や消火活動に必要な時間を確保するうえでも重要な性能です。
また、必要な防火性能を確保しながら、条件に応じて木材を活用した設計を検討できる点もメリットです。耐火建築物と比べて求められる性能が異なるため、建物の条件によっては、木造の特徴を活かしながら計画できる場合があります。
さらに、準防火地域内にある準耐火建築物等では、一定の条件を満たすことで建蔽率の限度が10%緩和される場合があります。敷地条件によっては、建築面積を確保するうえでメリットとなる制度です。
準耐火性能を確保するためには、構造部分に必要な防火措置を施したり、延焼のおそれのある部分の開口部に防火設備を設けたりする必要があります。そのため、一般的な木造建築と比べて使用する材料や施工工程が増え、建築コストが高くなる場合があります。
また、外壁や軒裏、窓やドアなどについて必要な防火性能を満たす必要があるため、使用できる材料や仕様に条件が設けられることがあります。木材を現した仕上げや木製建具などを取り入れたい場合には、延焼のおそれのある部分や必要な防火性能を踏まえて設計することが重要です。
準耐火建築物に求められる仕様は、建物の規模や用途、建築する地域などによって異なります。コストやデザインへの影響も含め、計画の初期段階から必要な防耐火性能を確認しておくことが大切です。
近年実施された建築基準法の改正によって、木造建築に対する制限が変更されています。
具体的には、これまでの準耐火構造では、「45分」「60分」の耐火性能が主流で、それ以上の規模・用途の建築物を建てたい場合には、鉄筋コンクリート造などの耐火建築物にするしかありませんでした。
しかし、建築基準法の改正によって新たに「75分準耐火」「90分準耐火」と呼ばれる基準が制定されています。ことにより、これまでは耐火建築物でしか建てられなかった規模や用途でも、「木造(準耐火建築物)」としての設計が可能となっています。
こちらの記事では、準耐火建築物について解説してきました。準耐火建築物の基準は、技術の進歩によって年々合理化されています。さらに建築基準法が改正されたことによって、これまでは鉄筋やコンクリートでの建築が必須とされてきた中高層ビルや大規模な施設などにおいても、木造の可能性が広がったといえます。
「規模」「用途」「地域」という3つの条件について正確に把握することによって、安全性や環境への配慮を両立した木造建築につなげられます。