このページでは、木造建築における構造計算の重要性について解説します。構造計算とはそもそもどういったものかをはじめ、構造の安全確認の方法や検討項目、構造計算の方法などについてまとめているため、木造建築の安全性の確保について知りたいという方は参考にしてください。
構造計算とは、建物の構造安全性をさまざまな角度から科学的に検証・確認するために行う計算です。構造計算は調べる分野が多く、作成する構造計算書もA4用紙で1,000枚以上に及ぶことも珍しくありません。高度な計算が求められる構造計算を理解している人は住宅業界でも少ないため、多くのハウスメーカーや工務店では構造計算を専門とする第三者機関に依頼しています。
構造計算では、家にかかる重さで建物がどう変形し、応力がどのように生まれるのかを数値で算出し、安全性を確かめます。家にかかる重さの種類は「水平荷重」「鉛直荷重」の2つ。それぞれの荷重について解説します。
仕様規定とは、建築基準法で定められているルールのことです。すべての木造建築物は、建築基準法で定められている以下の仕様規定を守る必要があります。
また、仕様規定に基づく3つの簡易計算(壁量計算・四分割法・N値計算法)で構造の安全を確認します。壁量計算は、多くの会社に採用されている最も一般的な計算方法です。
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に規定されている安全確認方法です。耐震等級2・3を確保するための壁量計算のほかに、床・屋根倍率の確認および床倍率に応じた横架材接合部の倍率を検証。長期優良住宅や性能評価住宅で採用されています。
構造計算では許容応力度計算を行い、「壁の強さ」「部材の強さ」「地盤・基礎の強さ」の3つを調べ、構造の安全性を確認します。安全確認方法のなかでも最も詳しく計算することから、安全性能のレベルが一番高いとされている計算法です。
構造計算には、ルートと呼ばれる計算方法が建築基準法で定められています。ルートは大きく分けてルート1(許容応力度計算)、ルート2(許容応力度等計算)、ルート3(保有水平耐力計算)の3種類あり、ルートが進むごとに計算がより複雑になっていくのが特徴です。
ルート1では、まず建物にかかる重さを調べます。重さを調べる理由としては、建物が重いほど地震のときにかかる負荷が大きくなるためです。ルート1で調べる重さには以下のものがあります。
次に、建物にかかる重さが力としてどう伝わり、その力に耐えられるかどうかを調べます。調べるポイントは以下の通りです。
ルート1の許容応力度計算では、これらを調べることで地震や台風に対し、持ちこたえられる建物かどうかを検証します。
ルート2の許容応力度等計算では、次のような計算が行われます。
許容応力度等計算では、通常1/20~1/200以上の傾きを損壊とみなし、それ以上は傾かないように設計されます。構造計算が行われた建物と評価されるのは、一般的にルート2まで計算したものです。
ルート3の保有水平耐力計算では、大地震が発生したときに建物が全壊しないかどうかを計算します。保有水平耐力計算で調べるポイントは以下の2つです。
ルート3まで確かめられた建物は、一瞬の強い揺れがきても全壊はまぬがれられるため、理論上は大地震でも安全であると言えます。
構造計算を行う目的は、地震や台風などの自然災害が発生しても倒壊しない安全な建物を建てるためです。ルート2(許容応力度等計算)まで構造計算がされた建物は耐震性をより確保でき、震度5以上の大きな地震から建物が半壊するリスクを抑えられます。
もしも地震保険に加入していて、建物が半壊となった場合、受け取れる保険金は保険契約金額の60%とされています。建物が全壊しないと保険金を全額受け取れないため、保険金だけでは家の修復費用をまかなえないのが現実です。きちんと構造計算を行って地震による半壊のリスクに備えているかどうかで、その後の生活に大きく影響します。
大きな地震がいつ発生するか分からないからこそ、建物や命を守るために構造計算が重要とされているのです。
四号建築物確認の特例とは、四号建築物と呼ばれる一般的な木造住宅(延べ面積500平方メートル以下・2階建て以下)については、建築士が設計・計算を行えば確認申請時に構造計算書を提出しなくてもいいとする法律です。この法律によって2階建て以下の木造住宅のほとんどは審査の省略が認められており、行政による構造のチェックを受けていないことになります。
一方で、四号特例(審査省略制度)を活用した住宅で不適切な設計・工事監理が多数行われ、構造強度不足が明らかな事案が断続的に発生していることを受け、2025年4月(予定)から四号特例の対象範囲が見直されることに。構造計算を省略できる建物の対象範囲が、延べ面積500平方メートル以下から300平方メートル以下に縮小される見通しです。
ただし、延べ面積が300平方メートル以下に縮小されたとしても、一般的な2階建て木造住宅のほとんどが四号建築物確認の特例に該当するため、これまでと変わらず構造計算書の提出は不要になります。木造住宅の安全性に関する問題が解決したわけではないということは、木造建築を計画している消費者側が留意しておく必要があるでしょう。
構造計算は、地震や台風などの自然災害がきても耐えられる安全な建物の建築が目的です。建物を自然災害から守るだけでなく、そこに住む人の命を守ることにもつながるため、木造住宅の建築において重要な役割を担っています。一方で、一般的な木造住宅については、特例によって構造計算書の提出が義務化されていません。
安心して暮らせる大規模木造建築を建てたい場合は、木造建築の構造計算を依頼できる構造設計事務所に依頼するのがおすすめです。
木造建築における構造計算は、耐震性や荷重への安全性を数値的に検証し、法的基準を満たすための重要な工程です。プレカットは、構造材を工場で精密加工することで現場作業を効率化し、品質を安定化させます。
構造計算からプレカットまでを一貫対応する体制では、設計意図が正確に反映され、施工ミスや情報伝達のロスを防止可能です。工期短縮やコスト削減、品質管理の明確化も可能となり、設計者と施工者双方に大きなメリットをもたらします。