大規模木造建築を検討する際、「木造は地震に弱いのではないか」と不安を抱く方もいるでしょう。本記事では、木造建築が鉄骨造やRC造に劣らない耐震性を持つ理由や、木材ならではの強さの秘密を解説します。
過去の大地震による倒壊事例などから、木造建築に対して脆弱なイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、被害が顕著だった建物の多くは旧耐震基準で建てられたものです。必要壁量が強化された新耐震基準の木造建築物は、2016年の熊本地震において倒壊や崩壊の防止に有効であったと認められています。さらに、接合部の仕様等が現行規定どおりのものは、地震による被害の抑制に効果を発揮します。つまり、適切に設計および検証された木造建築であれば、十分な耐震性を有していると言えるでしょう。
大規模な非住宅木造の設計においては、一般的な小規模木造住宅とは異なるアプローチが求められます。建物の規模や用途に応じて、上部構造の保有する耐力をはじめとする要素を厳密に評価しなければなりません。素材が木であっても、要求される安全性は鉄骨造やRC造を設計する際と同等です。適切な基準に基づいて構造計算を行うことで、大規模施設にふさわしい堅牢さを確保できます。
木材という素材そのものにも、地震に対する明確な優位性が存在します。それは、鉄やコンクリートと比較して「軽量」であるという点です。木材は比重が小さく、重さの割に強いという物理的特性を持っています。引張強度で比べた場合、コンクリートより強く鉄より弱いものの、重量に対する強度を示す「比強度」に優れた素材として評価されています。
地震発生時に建物が受ける水平方向の力(地震力)は、建物の重量に比例して大きくなる性質があります。木材の「軽さ」を活かすことで構造物全体の重量が抑えられるため、RC造などに比べて地震のエネルギーを受けにくくなります。結果として、揺れに対する負荷が小さくなり、構造部材へのダメージを軽減しやすい構造体を構築できるのです。
素材としての比強度が高く軽量であっても、それだけで建物の安全性が保証されるわけではありません。耐震性を十分に発揮させるためには、耐力要素の配置等による低減係数などを適切に評価する必要があります。壁の配置バランスや重心と剛心のズレ(偏心率)に配慮した綿密な設計が不可欠です。
一定規模以上の非住宅木造建築物において耐震性を確実に担保するためには、許容応力度等計算(ルート2)や保有水平耐力計算(ルート3)といった高度な構造計算が必須となります。
「木造=地震に弱い」というのは過去の基準に基づく誤解であり、適切な検証によって安全性を高めることが可能です。木材特有の軽さと比強度の高さは、耐震設計において有利に働きます。大規模木造の安全性を向上させるためには、専門的な構造計算が欠かせません。設計時の不安を払拭するためにも、実績のある構造設計事務所へ相談することをおすすめします。