大規模木造建築は、意匠性や環境配慮など多くのメリットがあります。一方で、防耐火設計や構造計算など木造特有の課題もあり、設計初期からの計画が重要です。本記事では、施主へ提案する際に押さえたいメリットと注意点を紹介します。
木造建築ならではの「現し(あらわし)」仕上げは、構造材そのものを意匠として見せることができ、木の温もりを活かした空間づくりが可能です。オフィスや店舗、公共施設などにおいて、他の工法にはない付加価値を演出できる点は、施主への提案において強みとなります。デザイン面での差別化を図りたい案件では、検討する価値があるでしょう。
木造建築は木材に炭素を貯蔵できることから、脱炭素化への貢献が期待されています。また、地域材を活用することで、企業のサステナビリティへの取り組みを示す材料にもなり得ます。
※参照元:日本木造住宅産業協会(https://www.mokujukyo.or.jp/initiative/carbon-simulate/)
木造建築はS造やRC造と比べて建物自体の重量が軽く、建物にかかる荷重を抑えられるため、地盤の状況によっては地盤改良や基礎工事にかかる費用を抑えられる可能性があります。ただし、これは地盤条件や建物規模によって変わるため一概には言えません。
木造建築の法定耐用年数は、事務所用24年、店舗・住宅用22年など用途によって定められています(※)。この年数は減価償却費を算出する際の基準となるため、財務計画や税務上の検討材料になり得ます。
※参照元:国税庁【PDF】(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf)
国や自治体は木造建築の普及を推奨しており、地域や条件によっては補助金・助成金制度を利用できる場合があります。例えば、JAS構造材を対象とした制度などが設けられている場合があります。制度を上手に活用することでコスト面の負担を軽減できる可能性があります。
大スパンを実現するために大断面集成材などの特殊な加工木材を用いると、コストが高騰しやすい傾向があります。一方で、一般流通材をうまく組み合わせて設計することで、コストを抑えながら意匠性を確保する工夫も可能です。S造やRC造とは異なるコスト構造を理解したうえでの計画が求められます。
建物の規模が大きくなるほど、耐火建築物など厳しい防耐火基準への対応が必要になり、木材を現しのまま使用する難易度が上がります。また、許容応力度計算をはじめとした高度な構造計算も欠かせません。これらの技術的なハードルをクリアできるかどうかが、意匠を実現するうえでの分かれ目になります。
意匠設計がある程度固まった後に構造計算を依頼すると、架構計画との不整合やコスト増につながりやすくなります。基本設計などの初期段階から構造設計者と連携し、架構計画や納まりをすり合わせておくことで、後戻りの少ない設計を進めやすくなります。
木造建築はS造やRC造とは構造の考え方や納まりが異なるため、木造特有の知見を持つ構造設計者との連携が重要です。一般流通材の活用方法や接合部のディテールに精通し、意匠の意図を踏まえた提案ができるパートナーを選ぶことが、デザインを損なわない実現につながります。
大規模木造建築には、意匠性や環境配慮、コスト、税務、補助金といった面で施主に提案しやすいメリットがある一方、防耐火や構造計算といった技術的なハードルも存在します。意匠デザインを損なわずにプロジェクトを進めるためには、基本設計の段階から木造建築に強い構造設計パートナーと連携できるかどうかが、成功の分かれ目になるでしょう。
本メディアでは、得意とする建物別に構造設計事務所をご紹介しています。自社にぴったりのパートナー探しにぜひ参考にしてください。