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大規模木造で大スパンを実現する構造とは?

本記事では、大規模木造建築において柱のない大空間(大スパン)を実現したい設計担当者へ向け、その構造的手法やコスト課題の解決策を解説します。中・大規模建築における木造化が国主導で進むなか、意匠性とコストを両立する架構提案のヒントとしてご活用ください。

大規模木造で柱のない「大スパン(大空間)」を実現するには

近年、脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、公共施設やスポーツ施設などで中大規模の木造化が推進されています。それに伴い、非住宅分野でも木造による大スパン建築への期待が高まってきました。ここでは、大空間が求められる背景と、スパンを飛ばす際に直面する構造的な課題について整理します。

※参照元:林野庁「建築用木材の技術開発・実証及び設計者等の育成」(https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/technique_development_demonstration.html)

倉庫や体育館・商業施設で求められる無柱空間のニーズ

物流倉庫やスポーツ施設、大型店舗などでは、レイアウトの自由度や動線の確保といった機能性の観点から無柱空間が強く求められます。具体的な事例として、学校水泳授業を受け入れるプール施設において、ダイナミックなむくり形状の合成梁を採用し、支持スパン25.2mという大規模な無柱空間を実現した木造化事例も存在します。

※参照元:一般社団法人 日本CLT協会(https://clta.jp/case/detail/226-tobiuopool/)

スパンを飛ばす際に生じる構造的・コスト的な壁

木造で大スパンを実現しようとする場合、部材の強度不足やたわみの発生を抑えるための対策が必要不可欠です。特注の巨大な部材を使用すれば解決できるものの、それは大幅なコスト増を招きます。そのため、建築用木材の利用環境整備においては、低コスト化や合理化のための技術検証が業界全体における重要な課題として位置づけられています。

※参照元:林野庁「建築用木材の技術開発・実証及び設計者等の育成」(https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/technique_development_demonstration.html)

大スパンを可能にする主な構造

大空間の構築には、用途やデザインに応じた適切な架構形式の選定が欠かせません。木造ならではの意匠性を活かしつつ、安全に大スパンを実現するために、さまざまな構造的工夫が取り入れられています。ここではその構造手法とその特徴を解説します。

木造トラス構造のメカニズム

木造トラス構造は、部材を三角形に組み合わせることで荷重を分散させる仕組みを持っています。細い部材の組み合わせでも高い強度を保ちやすいため、軽快な意匠と大空間の確保を両立しやすいのが強みです。また、木材と鋼材のケーブルなどを組み合わせて張力を生かす張弦梁も、中・大規模木造の標準的な構造設計において有効な架構形式の選択肢となっています。

大断面集成材を用いたラーメン構造

柱と梁を剛接合することで、筋交いや耐力壁なしで空間を確保するのが木質ラーメン構造です。大断面集成材やCLTを使用することで、木ならではの重厚感や温かみのある意匠を表現できます。ただし、部材のサイズが大きくなるほど設計や加工の手間が増加しやすいため、計画の初期段階から搬入経路や接合部の納まりを慎重に検討しなくてはなりません。

意匠とコストのバランスを取る大空間の構造設計

魅力的な大空間を現実的な予算内で完成させるには、木造建築における技術評価や基準に基づいた合理的な設計が不可欠です。デザイン性を損なわずにコストを最適化するための手法と、高度な接合技術の重要性について解説します。

コストを抑えて大空間をつくる「一般流通材」の活用

断面寸法の大きい特注材を多用すると、材料費だけでなく運搬費や加工費も跳ね上がってしまいます。そこで有効なのが、市場に広く流通している一般流通材を組み合わせて大スパンを実現する設計手法です。中大規模木造普及の鍵となる「低コスト化」を達成するためには、こうした流通材を巧みに利用する架構提案が高い価値を持ちます。

独自接合技術を用いた強固な架構づくり

一般流通材で安全な大スパンを構築するには、接合部における強度の確保がカギを握ります。近年では、接合金物を木材の内部に内蔵することで、木の美しい質感(現し)を損なわずに高い剛性と強度を発揮する技術なども開発されています。こうした独自の接合ノウハウを持つ構造設計のパートナーと協働することで、コストを抑えながらも美しく強固な大空間の実現が期待できるでしょう。

まとめ

大規模木造で大スパン構造を実現するには、木造トラスの活用や流通材の組み合わせによるコストと意匠の両立が重要です。近年は新しい基準に対応した構造計算プログラムや設計支援ツールも整備されています。計画をスムーズに進めるためには、高度な専門性を有する構造計算のプロフェッショナルへ相談することが成功への近道と言えます。