木造建築では、経年による木材のたわみや、それに伴う接合部の緩みが生じることがあります。
本記事では、木材に長期間一定の荷重がかかることでたわみが増加する「クリープ変形」のメカニズムをはじめ、意匠や構造への影響、工法を用いた具体的な対策までを解説します。
木材に長期間一定の荷重が作用し続けることで、たわみが徐々に増加していく現象を「クリープ(クリープ変形・クリープ現象)」と呼びます。
これは木材特有の経年変化であり、施工時の木材の含水率や、使用箇所の温湿度といった環境条件が進行度合いに影響を与える要素です。大規模木造において長期的な安全性を検討する際は、このメカニズムをあらかじめ把握し、部材や接合部の選定基準を設けることが求められます。
クリープ変位が進行すると接合部の緩みが生じ、建物の剛性低下を招く可能性があります。また、たわみが増すことで内装の仕上材にひび割れが生じるなど、意匠面に影響を及ぼす可能性も考慮しなければなりません。
木材の乾燥状態による試験結果では、未乾燥材を使用した場合、変形が初期の3.5〜4倍弱にまで拡大することが確認されています。このように木材の乾燥状態によって変形量に数倍規模の差が生じることからも、クリープ変位は接合部の性能や建物全体の耐久性を左右しかねない要素であるといえます。
クリープ変位を抑え、長期的に安定した大規模木造を設計するためには、材料の選定や構造計算に加え、接合部の工法選定まで含めた多角的な視点から対策を講じることが重要です。
寸法安定性を確保し、クリープ変形や狂い、割れなどの経年変化を低減させるためには、十分に乾燥した木材(乾燥材)を使用することが基本の対策と言えます。建設地の気候や空調設備など、使用環境に適した含水率の木材を選ぶことで、部材ごとの変形リスクを抑える設計の検討材料になります。
木造の構造計算においては、長時間荷重がかかることで生じるクリープ変形を見込むことが不可欠です。建築基準法に基づく告示では、長期荷重による変形の増大係数を「2」として設計を行うよう規定されています。
荷重の種類や作用する時間に応じた係数を適切に反映させることで、将来的なたわみを前提とした構造計画を立てる際の判断基準となります。
大規模木造の設計において、接合部の緩みやクリープ変位を抑えるための選択肢として、金物を木材に内蔵する工法が存在します。
接合技術のひとつである「拡張樹脂アンカー工法」は、ボルトなどの金物を木材内部に挿入し、エポキシ樹脂で包み込む構造です。接合部の変形(初期すべり)が抑えられることで構造体全体のたわみが把握しやすくなり、経年による接合部の緩み軽減に寄与します。
金物が外気に触れないため、湿度や塩害による錆・腐食に強い耐久性を備えている点も特徴の一つです。また、金物が表面に見えない組み木のような仕上がりになるため、大スパン建築やデザイン性を重視する施設などを設計する際に、意匠上の制約を減らすための有効な選択肢として判断する材料になります。
大規模木造におけるクリープ変位への配慮と接合部の緩み対策は、建物の長期的な安全性を左右する要素です。加えて、金物内蔵工法などクリープ変位を抑える接合技術の選定は、大スパン空間や意匠性の高いデザインを実現するうえでの自由度にも関わってきます。
将来的な変形や劣化を見据えた構造計画と、意匠上の制約を抑える接合技術の両方に精通した構造設計事務所へ早期に相談することが、理想の意匠を実現しながら建物の価値を長期的に維持するための第一歩です。
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